歯なしにならない話
「歯医者さんてどうも苦手で・・・」
「あの音を想像するだけで怖くて・・・」
このような声を耳にすることがあります。
あるいは、歯医者さんに行って嫌な思いをしたというお話も聞くことがあります。
「覚悟を決めて歯医者さんに行ったのに、ほとんど話も聞いてもらえないまま、いきなり歯を削られた・・・」
「歯医者に行ったほうが良いのかなぁ・・・でも、今度もどうせ歯を削られるだけだろうし・・・」
「もっと腕の良い歯医者はないのかなぁ・・・でも、歯医者の善し悪しはよく分からないし・・・」
「痛いのはいやだよなぁ…」
「治療費も高いし、今のところはまぁいいか。まだ我慢できそうだし、もしも痛くなったときにはまたそのときにまた考えよう。」
いかがでしょうか?
きっと、あなたにも思い当たることがありますよね?
どれもこれも、その気持ちがよく分かります。
何を隠そう、歯医者さんで働くまでは、私たち自身が歯医者さんにそういうイメージを持っていましたから・・・
でも、多くの方が、歯医者さんに対して「怖い」とか、「痛い」とか、マイナスのイメージを持ってしまうのは一体なぜなのでしょうか?
それは、歯医者さんを『治療の場所』として活用しているからです。
治療の場所だと考えるから、「痛くなるまでは」行きたくありません。
痛くなるまで行かないでいるから、歯を削られなくてはならなくなってしまいます。
歯科医院でいくら優しく「痛かったら教えてくださいね」と言われても、やっぱり痛いもの痛いものです。
そして、歯医者さんへの苦手意識はますます大きくなってしまいます。
苦手だから、次に痛くなったときにはできる限り我慢してしまって、結局ひどくなってから歯医者さんに行くことになります。
きっとこんな悪循環に陥って、歯医者さんにマイナスのイメージを抱いてしまっているのでしょう。
この悪いサイクルに陥ってしまうと、歯医者さんに対する苦手意識はどんどん強くなるし、歯も悪くなる一方です。
これは何も患者さんばかりが悪いわけではありません。歯医者さんでも患者さんが初めて来てくださったときに、“歯の病気”の話ばかりでなく、“歯の健康”についてもお話をしていれば、「痛くて我慢できなくなるまで放置する」ことは無かったと思うのです。
この悪循環から抜け出す方法はひとつです。
悪い歯を治すために歯医者さんに行くのではなく、健康な歯が悪くならないようにするために、歯医者さんに行くようにすれば良いのです。
例えば、「風邪をひいたかな?」と思えば、近くの内科に行ったり、風邪薬を飲んだり、何らかの予防的な対処をされることでしょう。あるいは、日頃から体を鍛えて、病気にならないように気をつけている方も数多くいらっしゃると思います。
でも、歯のことはどうでしょうか?
これからは、「歯医者さんは歯が悪くなってから行くところ」という常識を変えましょう!
どこも悪くないからこそ、歯医者さんに行くのです。
どこも悪くないときに行けば、歯を削られることはありません。
だから、痛い思いも怖い思いもせずにすみます。
女性の歯科衛生士に、やさしくお手入れをしてもらうだけで、歯の痛みとは無縁の生活を送れるとしたら、とても良いと思いませんか?
これからは「歯医者さんは痛くなったら行く場所」という常識を変えてください。
今日から「歯医者さんはどこも悪くないからこそ行く場所」です!
どんなことをするの?
私たちは、痛みのあるなしに関わらず「歯のお手入れ」をするために、歯医者さんに通って欲しいと思っています。
髪が伸びたら美容院や床屋さんに行くように、歯が汚れる周期に合わせて歯医者さんに通ってもらえると良いでしょう。
重い病気を未然に防ぐために、1年に1度は健康診断を受けることでしょう。
車だって、事故を未然に防ぐために車検を受けます。
それと同じことです。
もしかしたら、歯医者さんに予防のために通うことがイメージできないかもしれませんので、どんなことをするのか簡単にお話しましょう。
お口の状態によって異なりますが、数ヶ月ごとにご来院いただいて、『お口の状態の点検』と『お口の中の大掃除』を行います。
まずは、治療したところなどお口の中の状態が悪くなっていないかを点検します。
そして、明るい笑顔の優しい歯科衛生士さんが、専用の道具を使って汚れが溜まってしまったところをキレイにお掃除してくれます。歯ブラシでは取れない歯石や歯垢を落として、ピカピカでツルツルの歯にしてくれます。
これだけのことですから、痛いことはほとんどありません。
もちろん、キーンというあのドリルのいや~な音も聞こえません。
プロのケアを受ければ、歯みがきだけでは取り除けない、むし歯や歯周病の原因を根本から取り除くことができます。
ですから、歯のお手入れをするために歯医者さんに通うことを習慣にすれば、歯のトラブルと無縁の生活を送れるのです。
また、日常的なケアのポイントなど、患者さんお1人お1人に合わせたアドバイスもしています。ご家庭で行う“セルフケア”と歯科医院で行う“プロケア”とを上手に組み合わせて、あなたの歯を守り続けていきましょう!
2つの予防
ひと言で「歯の病気やトラブルを予防する」と言っても、そこには2つの考え方があります。
ひとつは、「治療した歯がもう二度と悪くならないように」と考える予防です。
悪くなったら治療をするということを繰り返していると、一生涯というスパンで健康に保っていくことは難しくなってしまいますから、このような予防の考え方は非常に大切です。
もうひとつは、「もともと健康な歯を悪くすることのないように」と考える予防です。
歯が生え変わったときから悪いなんてことはありませんよね。元々は健康だった歯なのに、あるときむし歯などのトラブルによって悪くしてしまいます。
どちらも同じ「予防」という考え方ですが、できることなら『後者の予防』がベストです。
なぜなら、歯には自己再生能力がないからです。
一度削って治療をしてしまった歯は、もう二度と元の状態に戻ることはありません。
髪の毛は切ってもまた伸びてきますが、歯は削っても再生することはないのです。
生まれながらにして持っている自分の歯が一番です!
特に、お子さんはまだ生えてきたばかりの健康な歯を持っています。
幼い頃から『予防』という良い習慣を身に着けて、歯を『一生もの』として大切にして欲しいと思います。